*work-in-progress(Office in Kanagawa)
水道施設の清掃工事等を行う企業の社屋である。敷地内に多数の大型車両を収める必要があり、車両配置の“デッドスペース”を丹念に拾い出すことからヴォリューム計画が始まった。その結果、平面規模は車両長さを上限とするものとなり、高さを10m未満に抑えつつ、高天井のピロティを備える3階建ての社屋を成立させることが与条件として導かれた。 組み立ての論理が可視化されたインダストリアルな質感を伴う、精密かつ効率の良い合理的な建築が相応しいと考えた。
社屋は倉庫用途と執務用途をおよそ1:1の割合で組み合わせる。室用途に見合う天井高さを確保しつつ動線の連続性を保つため、床段差1.0m程度に調整したスキップフロアで構成することにした。緩やかな段差に渡る鉄骨階段を動線のコアに据え、別のフロアが垣間見えることで上下移動に諧調とリズムをもたらす。
敷地内にはコーポレートカラーを打ち出した金属質のブルーの工事車両が並ぶ。それとリンクしながら、同時にオフィスに求められる親密さに連なるよう、スキップフロアが生み出すグラデーションに素材感と色彩の段階づけを重ね合わせることとした。
外装は金属色を基調とし、亜鉛メッキ仕上げの手摺パネルが目透しで取り合う屋外階段や、スチールの単板で大きく跳ね出す庇を構成要素としてまとめ、材料特性を活かした組み立てとしている。内部では金属色に加え、青みがかったスチールメッシュ、パンチングメタルを建具や下足入れに用い、内部に進むにつれてブルーのファブリックや染色突板が段階的に現れる。最上階の床はオークフローリング、取り合う鉄骨はグレージュに調整し、下層の金属質から木質へ、視覚と触覚の両面で移ろう体験を用意した。
この移ろいの中で、部位・部材が目透しで取り合うことの意味合いが変容する。下層では素材同士を分節し質感を際立たせる具象化として作用したものが、上層では部位の輪郭のみを浮かび上がらせる抽象化として作用する。
工業的な美しさを支える組み立ての論理を軸に据えることで、素材と色彩は自然なふるまいを得るものとなり、寸法的な精密さが日々の使い勝手を柔軟に支えるものとなった。
Data
| 所在地 |
神奈川県川崎市 |
| 用途 |
社屋 |
| 構造 |
鉄骨造 |
| 階数 |
地上3階建て |
| 敷地面積 |
478.69㎡ |
| 建築面積 |
74.74㎡ |
| 延べ面積 |
218.43㎡ |
| 設計完了 |
2025.02 |
| 工事完了 |
2025.10(予定) |
Credit
| 施工 |
山武コーポレーション |
| 設計 |
2321建築設計 |
| 協力 |
[構造設計] エストルクトゥーラ |
| 写真 |
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| Client |
民間企業 |
| Note |
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